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2013年6月にSPACE CADETから写真集「DAILY」を発表した宇田川直寛。 一見グロテスクに見える彼の作品だが、画面の端々まで意識の行き届いた構成から無数の試行錯誤や制作プロセスの痕跡が垣間見え、見れば見るほどに1枚の写真の持つ力に引き込まれる。過去作や新作について、また彼が今考えている事を聞きたいと思いアトリエ兼自宅に伺いインタビューを行った。
untitled
(『untitled』2013年 より)
 

SPACE CADET(以下SC):宇田川さんとは一緒に写真集作ってるんで改めて話しを聞くのも変な感じがしてるんですけど新作についてや、先日発売になった写真集「DAILY」の宣伝も兼ねたインタビューができたらなって思ってます。

宇田川直寛(以下NU):そうですね、変な感じです。「DAILY」の時に結構話しましたもんね。

SC:まずは「DAILY」の作品自体の事からお聞きしたいんですけど…。

NU:作品を持ってきますね。

SC:これは写真自体に書き込んでるんですよね?印画紙ってどんな感じのもの選んだんですか?

NU:マット紙です。インクジェットで出してそれにボールペンとかで書き込んでます。

SC:この作品自体はいつから作り始めたんですか?

NU:2010年に「明るい部屋」(※)で発表したので、2009年から作り始めてます。
(※明るい部屋:東京•四谷三丁目の企画ギャラリー。2009年から2011年まで運営された。)

SC:宇田川さんがフリーになりたての頃ですか?

NU:そうですね、その頃はもうスタジオを辞めてます。28(歳)の時に辞めて、それから暫くはロケアシしながら生計立ててたんですよ。フラフラした生活をしてたんですけど、その頃は自転車旅行に行ったりもしてました。で、その旅行の後に「DAILY」を作り始めました。

SC:自転車旅行全然イメージにないですね、意外です。その時ってカメラ持って行ってたんですか?

NU:はい。毎日撮ってましたよ。何千枚も撮ったんですけど、一枚も使ってないです(笑)外で撮っててもピンと来なくて。外は何を撮ったら良いか分からないですね。

SC:最近の作品含めて籠ってる感じですもんね(笑)

NU:自分で撮ったものに対して全然面白くないなって思いましたね。

SC:その時の写真は使いものにならなかったと…。それで、帰ってきてすぐ家族を撮り始めるんですか?

NU:自転車旅行の写真があまりにどうしようもなくて、それに落書きをし始めたんですけどやってもエフェクトにしかならなくて、あまり意味のある行為じゃないなと思って。自分にとってしっくりくるのは、必然性が出てくるものはなんだろうって考えてたんですけど…。旅行に行ってる時とか帰って来た頃は家族について考えることが多くなって、段々と被写体が家族に定まっていったんですよね。

SC:その頃は実家暮らしだったんですか?

NU:家族とは一緒に住んでいなかったので、撮りに行ってました。

SC:なんで家族だったんですか?

NU:その時はちょっと自己否定的な気持ちになってて、お金もなくなって。旅行中は浮浪者みたいな生活してたんですよ。野宿してたし誰かと接することもないし、社会からの距離も遠くなっていって。

SC:仕事も辞めちゃってましたしね(笑)

NU:俺何してるんだろって気持ちが強くなっていって、ちょっと引き籠ろうと思って撮ってきたネタを元に部屋で出来る描き込む行為をしてました。

SC:自転車旅行の次に家族写真になる訳ですけど、その間他に試した物は無く、すぐに家族の写真に書き込むっていうのになって行ったんですか?

NU:すぐ家族の写真になりました。描き込む作業は時間が掛かるからその写真自体に自分が思い入れがないと書きこんでいる時間に耐えられないんですよね。その頃自分の存在意義みたいなのに悩んでた所もあって、それで家族の写真、父親っていう対象になってったんですよ。

SC:お父さん結構変わってますよね?どんな方なんですか?そもそもお父さんは好きですか?

NU:嫌いじゃないけど、父親と自分が凄く似ているというか…。俺と親父は仲が良いかなと思っていたんですけど、実は心の底から話したことがないなと思って…。なんでだろうと思ったらお互いが似過ぎていて…、顔も似てるけど考え方とか性みたいなのまで似てるなって思いますね。俺が父親を見て病理的だなって思うところが似てるというか…。腹を割って話したらわかりすぎて気持ち悪いからあまりちゃんと話した事がない、そんな関係です…。で、なんでしたっけ?(笑)

SC:好きか嫌いか?(笑)

NU:複雑です、嫌いじゃないんですけどね(笑)

SC:写真集ではお母さんの写真は違和感があったのでカットしてお父さんの写真だけにしましたけど、母親より父親に描くことに意味があったんですかね?

NU:そうですね。母親はついでみたいな感じです。

SC:この写真集レイアウトはフォーマット決めてやっているし、枚数が多いのであんまり編集が入ってない全部盛りみたいに思われがちですけど結構宇田川さんとやりとりしましたよね。当たり前の事ですけど…。

NU:400枚近くから200枚に絞ってますしね、半分近くまで削ってるんですよね(笑)

SC:半分がボツ(笑)
宇田川さんと知り合う前にホームページで作品見た時に、どんだけ作品数あるんだろうって思ってましたもん。全部見切れなかったです。ホームページも見にくかったですし(笑)

NU:ホームページは、今もそれです(笑)

SC:ホームページ含め、宇田川さんの作品って検索しても見つけにくかったですよね。今はfacebookとかあるから少しはどんな人か分かりますけど。会ってみたら意外と好青年ですよね。会うまではすっごい怖い人なのかなとか思ってましたけど(笑)

NU:ははは(笑)

daily HOME HOME

SC:SPACE CADETって出版社ではないし、場所を持ってるギャラリーでもないし他のもっと知名度のあるところから声がかかったら、作家にとってはそっちの方が良いだろうなって思ってるんですよね。けど「DAILY」を知った時、発表から大分経っていたし、完全に埋もれちゃってて誰も見てないんじゃないかなって状態だったんですよね。良い作品なのにこのまま眠らせてしまうのはもったいないなと思って、それであのタイミングで声を掛けさせてもらいました。明るい部屋で展示をやってすぐだったら声をかけていなかったと思いますね。展示の時に何か反応は無かったんですか?

NU:一切ないです(笑)

SC:声掛けて作って良かったなって思います。2010年展示で、2013年に出版ですもんね。ほっとかれるよりは良いですよね(笑)

NU:ほんと捨ててしまおうかなくらいに思ってましたからね(笑)

SC:捨てるのは勿体無いですけど。この作品て実物よりwebや本にまとめた方が魅力的ですよね。 書き込むので実物は思ったより大きいんですけど、実際より小さいサイズにして見せた方が密度が増して魅力が増す気がしました。だからといって実物捨てても良いって訳ではないですよ(笑)

NU:はい(笑)

SC:「DAILY」の制作は終了して、今は新作に取り掛かってると思うんですけどSPACE CADETの2回目の展示の時の作品のような、自分で撮った写真をコラージュしたような作品を作り続けてるんですか?まだ恵比寿に行けてなくて見れてないんですけど、(キヤノン写真)新世紀(※)に出した作品もそれの延長線上にあるような作品なんですか?
(※キヤノン写真新世紀:キヤノン主催による写真のコンテスト。写真の現在に注目し写真表現の新たな可能性に挑戦する新人写真家の発掘・育成・支援を目的とした公募コンテストとして1991年設立された。)

NU:そうです。ちょっとサンプルをもってきますね。

SC:卓上じゃなくなったんですね。
(※6月に展示したシリーズは卓上のみで展開)

NU:そうなんですよ。卓上って状態から一歩引いて、撮ってる状態も撮影していったらどうなんだろうと思ってたんで、あの撮り方はやめましたね。

SC:部屋に籠ってる感じがでてますね。

NU:籠るのが好きなんですね。どこも行きたくないみたいな(笑)

SC:(キヤノン写真)新世紀に応募した時には何かテキストとか添えてたんですか?

NU:特に何も。よくこんなものを面白いって言ってくれたなと思ってます。作品を選んで頂いた佐内さんからは「決断だけがある。この写真自体には一切何も意味がなくて何かを選んだりした行為の決定だけが残っている」みたいな事を言って頂きました。
即興感が自分にとって重要で、即興的に展開していって意味のないものを回していく。ループを作っていくんですけどループ自体には意味がなくて、側だけを作っていく作業をする。

回 回 回
(『回』2013年 より)
 

SC:普通もっとスピード感がでるようにデジタルにしたり、もっと扱い易いカメラにしたりすると思うんですけど結構面倒な事をやってますよね。それでもスピード感と即興感がありますよね。フィルムが染み付いちゃってるせいもあるんでしょうけど、多分このままが良いんでしょうね。

NU:DIYが好きで、きちんと設計図を作って綺麗に仕上げるよりは成り行きで作っていって隙間が出来ちゃったらガムテープでぐるぐる巻きにして埋めてしまう位の方が好きですね。ちょっと適当な所があるようなDIYが好きで、そのノリで作品を作りたいっていうのはありますね。

SC:適当さもあるんですけど、作品として成り立ってるなと僕は思っていて。SPACE CADETの2回目の展示で出して貰ったシリーズも凄い好きで、卓上っていう縛りの強い作品なんですけど見ていて全然飽きなくて。何か作品にする際に心掛けてる事とかあるんですか?例えばボツにする基準とかはありますか?

NU:自分の心がいやらしくなったらやめます。いやらしくなったらボツにします。こうみせるようにしてるなっていう自分に気付いたらボツにします。

SC:「格好良くなり過ぎちゃうな」とか「普通に格好良くなっちゃうな」とか、そういう事を言ってボツにする人とか居ますよね。そういう言葉聞くとハっとさせられます。

NU:格好良く見せようとしてるのはバレますね。バレて尚恥ずかしいですよね。何かを目指し始めたらやめますね。それっぽくなっちゃったらやめる。

SC:誰々っぽいなとか、何々っぽいなとかも入ってきますか?

NU:入ってきます。 作品にもよるのですがイメージを具体的な何かにし始めたらやめます。物語性とか象徴性とか。意味の無いようなループ感が大事なのです。

SC:好きな作品とか見て来たものとかに近いと、少し安心感が生まれるじゃないですか?即興って意識しないと、ついついそういうのが出ちゃう事もあるんじゃないですか?

NU:あります。JAZZの即興とかも好きなんですけど、即興って何を基準に良い悪いって言ってるのかがいまだに分からないんですよね。マイルスとかコルトレーンとかが「ブヒブヒ」ってやるんですけど、正直わかんないんですよね。でもこの人はきっとベストと思ってやってるんだろうな、とは思うんですよ。けど何が決め手となっているのかが分からない。だから自分も即興をやるっていうのはありますね。何か目的に向かう訳ではなく、何がこの瞬間に決め手になってるのかに興味があるみたいな。

SC:音楽の場合、目の前にお客さんが居たりしてウケたとか、その場での反応が分かりやすい部分てあると思うんですよね。けど宇田川さんは一人きりの作業ですべてが自分の判断ですよね。それってかなりストイックな作業に思えますけど、人に見せたり意見聞いたりっていうのを全然して無さそうですよね。

NU:してないです。ストイックというよりはただ単に人と会うのが嫌なだけなんですけどね(笑)

SC:最近は僕らみたいなのが良いって言ったり、コンペで評価されたりって少し後押ししてくれる声がありますけど、評価されなかったら辛いですね(笑)

NU:そうですね、何をやってるんだろうって感じですよね(笑)よく他者の介入があったほうが良いんじゃないか?とか言われるんですけど、それだと意味がなくなってしまうんですよね。「DAILY」の時もそうだったんですけど手が慣れちゃうと出来ちゃうんですよ。それだと即興性がなくなってしまって…。そうなっちゃった場合の乗り越え方として、他者のジャッジを入れたりとか、偶然を取り入れるとか、そういう自分を超えたものを入れるのは容易な選択だと思っていて…。教義的なものを決めてそれに判断を頼るのは自分の中の掘り下げにならないので、意味がないと思ってるんですよ。そもそも自分の掘り下げや自身の疑問点から制作が出発しているのに突き当たったら他者の介入で解決していくというのは、虫がよすぎる気がします。
今も考え中で上手く言葉にできる自信がないんですが…、 何かを選択する時に「いいな」って思って選択するんですけど、その「いいな」って思うその中身を知りたいんですよね。

SC:何も意識せずに「いいな」って思って撮るのって例えばテレビで見た綺麗とされてる風景とか、何かの写真集で見たものだったり、暗黙の内に刷り込まれた「いいな」が入っている気がしますね。もう少し本質的な「いいな」を掴んでいくような感じですか?

NU:「良い」とはどういう状態なのか?っていうのとか…。自分がこれは「良い」と判断した時に一体なにをもって「良い」と思ったのか?「良い」と判断した瞬間と結果として出来たモノの良い」との距離はどういうところにあるのか?とか…。 そういうのを探るような感覚で試行錯誤を続けてます。

SC:試行錯誤は止めどなく繰り返せそうなタイプですよね。「DAILY」も400枚近く書いて、上手く成りすぎちゃって良くないなって思ってやめたって言ってましたよね。400枚書いて気付きましたっていうのを聞いた時に、良くそこまで続けられるな…って思いましたもん(笑)

NU:上手くなった画も慣れた状態もどちらも含めて嫌なんですよね。

SC:大体飽きてると画にも現れちゃいますよね。

NU:飽きていると画にも現れるし、フレッシュさがないと駄目ですね。

暗室

SC:作ってる時間は何時位が一番多いですか?

NU:朝が多いです。6時位から始めるのが良いです。日が昇っちゃうと駄目です。油断してしまいます。

SC:夜中はやらないんですね?

NU:やらないです。

SC:作風とは裏腹に朝方なんですね(笑)

NU:早寝早起きです。

SC:夜作る人も多いけど、結構朝型の作家も多いですよね。
暫くは今のような作品を続けて制作していくんですよね?以前に絵も好きだって言ってたのを覚えてるんですけど。

NU:絵も好きです。

SC:「DAILY」の頃から比べると絵は減ってきてますよね。

NU:制作の手段として写真を使っている以上、写真というフォーマットで作品をフィニッシュしたいという思いがあります。写真から始めて、様々なルートをたどって写真として終わる。そういったなにかしらの制約があって、その境界線のぎりぎりの所で遊ぶ方が面白いです。写真の上に線を描いていくという行為はあまりに可能性を多く含み過ぎてていろいろ出来すぎるな、と思って今はやめています。それと、写真は工業規格っていう所が好きです。どっかの誰かが設計して作ったものを自分に都合のいい道具として使っている感じです。ハンドメイドクラフトなものより工業規格の方が好きなんです。写真に線を描いたらハンドメイド色が強くなってしまいます。

SC:1枚の写真の作品にしていく作業っていうのはこれからも同じように続けていくんですよね?

NU:このまま続けます。

SC:端から見ていると、ほんとストイックな作業だなって思いますけど、宇田川さんの性に合ってるんでしょうね。

NU:合ってると思います。結構楽しいですし。

SC:こちらも宇田川さんの作品を見ているのは楽しいです。楽しいって言葉が合ってるとは思わないんですけど(笑)
新作の話ばっかりになっちゃたんで少し本の話に戻らせてもらいますね。宇田川さんはジンをいくつか作ってますよね?

CAKE CUT CAKE CUT HOME HOME
 
(左『CAKE CUT』2012年 右『home』2012年 より)
 

NU:「CAKE CUT」と「HOME」の2つです。

SC:今までって少数なのでインクジェットでの出力だったと思うんですけど、今回オフセットで作ってみてどうでした?

NU:本が好きなんですべてが嬉しいですよね。印刷の違いもあるし、やっぱりインクジェットは駄目ですね…。

SC:色校の時、特に細かく指示する訳でも無く「もう少し赤を強く」とかその位で、そんなに細かく指示する感じではなかったですよね?

NU:このシリーズの場合色が転んでしまってどうとかはそこまで重要ではないなって。そういう作品ではないと思ってたんで。

SC:これまでのインクジェットと比べるとどうですか?

NU:インクジェットと比べてしまうと、やっぱりオフセットは良いですね。インクジェットは全然駄目だなって。薄い紙には綺麗に出せないし、インクでブヨブヨになるから両面印刷するには厚みが必要だし、本の形にする時は本当に不向きだよなぁって。一番イライラしたのがインク詰まりですけどね!

SC:今までってどんな製本だったんですか?

NU:家のプリンターで出力して、ホチキスでバチンって感じです。

SC:今も手元に残ってますか?

NU:あるんで持ってきます。

SC:レイアウトも自分でしたんですか?

NU:はい。

SC:結構レイアウトはすぐ決められる方ですか?

NU:優柔不断だからすぐには決められないですね。色々試行錯誤しながらって感じです。ぱっぱっと決める感じではないですね。

SC:レイアウトはPhotoshopですか?(笑)

NU:はい(笑)

SC:やっぱり。Illustratorでやればいいのにって作業を写真家の人ってPhotoshopでやりますよね(笑)

NU:Photoshopしか使えないんですよ(笑)

DAILY

SC:今回新しく「DIALY」を作ってみて、周りの反応ってありました?

NU:1_WALL(※)の時に推してくれた秋山伸さんには渡したんですけど嬉しい返事を頂きました。SPACE CADETに対しても「本にしたギャラリーにも敬意を表したい。」みたいなこと言って頂きました。よくこんな作品を本にしたなって意味も入ってるかもしれないですけど(笑)
(※1_WALL:株式会社リクルートホールディングスが運営するガーディアン・ガーデン主催による写真とグラフィックデザインのコンテスト)

SC:嬉しいですね。このインタビューを見て写真集買ってくれる人が増えたら更に嬉しいんですけどね(笑)宇田川さんに話しを聞いてると作家然としてるなぁって印象を受けるんですけど、美大出身とかじゃないんですよね?哲学とかが好きなんでしたっけ?大学では何を学んでたんですか?

NU:法律です。

SC:写真も哲学も関係なかったですね…(笑)

NU:文系の大学でしたけど、その頃から地元の友達が美大に行ったのを良いなと思ってたんです。なんで俺は美術が好きだったのに普通の大学に行ってしまったんだろうって。そしたらある日友達がカメラをやっていてこれはいいなって、その頃美大コンプレックスみたいなのがあったんですけど、これならデッサンできなくても絵が下手でも美術が出来るかもって思ったんですよね。

SC:美大コンプレックスって行ってない事に対してですか?

NU:美大コンプレックスっていうか対抗心みたいなのがありました。

SC:実際には何歳位からカメラを持ち始めるんですか?

NU:21歳とかで始めました。FM10ていうNikonのカメラが最初のカメラですね。

SC:普通(Nikon)FM2からじゃないんですか?お金が無かったからですか?

NU:それもありますけど、反骨です。美大とか写真学校の人って高いカメラ使ってるじゃないですか。俺は安くてもいいんだみたいな(笑)

SC:ははは(笑)じゃあ、フィルムも安いのを使ってました?

NU:フィルムはセンチュリアっていう、10本2,000円位の一番安いやつ使ってました。

SC:ちなみに今は何を使ってるんですか?

NU:今は35mmはKODAKのゴールドを使っていて、6×6はポートラです。フィルムとかペーパーのこだわりも殆どないです。安いから使ってます。

SC:あんまりこだわりがなさそうですね。廃盤になれば残っているものから選んで対応できちゃいそうですね。カメラは何を使ってましたっけ?

NU:中判はハッセル(ブラッド)を使ってます。6×6フォーマットのはハッセルで撮ったものです。

SC:そういえば最近の作品は6×6ですね。6×6って作品になり過ぎちゃうところがありますよね。カチッとし過ぎるというか…。さっき質問しながら、そういえば正方形だったなって気付きました…。正方形のイメージがそこまで無かったです。

NU:ジャンク感の方が強いんです(笑)6×6は縦横がなくなる感じが好きで使っています。

(『図』 2013年 より)
 

SC:展示とか、機会があればやりたいですか?

NU:やりたいです。やらなきゃ誰にもなれないなって思います。今は予定もないんですけどね。作家としてはキャリアがないのでこれからやらないといけないと思ってます。作品を初めて発表したのが2010年なので、まだまだキャリアが積めてないんですよね。人から声が掛かるにはまだまだ時間が必要なのかなと思います。

SC:DIYとかジャンク感の方が目立ってしまって、今まで聞いてきたような事を考えて作ってる人って見られてないと思いますよ(笑)このインタビューを通してどんな事を考えて作品を作っているのか少し伝わったら良いですね。

NU:どっちがいいんですかね?多くを語らない方が良い部分もあるような…。

SC:そんなに数は多くないですけど、僕が何人かの写真家と話した経験からすると作品が良い人って話してもボロが出ないし、話し過ぎて作品に魅力が薄れる事も殆どないと思いますよ。
宇田川さんて作家としての活動は始まったばっかりなんですね。30歳前後ってこのまま一生やってけるのかなって考えたり悩んだりすると思うんですけど他の人が作家を諦めたりする頃に始めてるんですね。

NU:散々回り道した挙句にやり始めたので、もはや気が楽です。

2013年11月